ごあいさつ

             平田眞由美

 熊本に江戸時代中期から伝わる「肥後古流長刀(なぎなた)」を受け継ぎ、伝えようと稽古を始めてから、かれこれ三十年になります。

 この古流長刀は、今日隆盛の、スポーツとしての「なぎなた競技」とはまったく異なる古武道です。動きは少なく、発声も少なく、型もそれほど多くありません。しかし「刃先四尺・柄四尺」合わせて八尺(二㍍四十㌢)の長刀(樫の木)を、縦に打ち込み、横に払い、斜めに繰り出し、突き上げ、引き切る技は、古武道のかつての姿を今に伝えています。

 八尺の棒を自由自在に操るには、体の重心のとっさの移動と腰の据わりが不可欠です。それは武道に限らずスポーツ全般の動きの基本であり、きれいに立ち、きれいに歩くための手本でもあるという思いは募るばかりです。

 私が肥後古流長刀の代表者として活動を始めてから十二年がすぎました。古流長刀の世界を訪ねて来る若い人はどんどん減っています。これも時代の流れでしょう。今は伝統の流派が絶えないことを念じるばかりです。

 肥後古流長刀の継承者として、流儀の歴史と相伝状(技の真髄)の二、三例を後世に残そうと、この冊子をつくることにしました。秘伝を公開することに釈然としない思いもありますが、時代はそれを許してくれるでしょう。

           平成二十六年立秋のころ